岐阜県垂井町 ONLINE COLLECTION
作る人のお話
垂井フォレストフィールド
岩崎 真人さん

“実家の山”に手づくりでキャンプ場を開設、
1サイト1組の贅沢なアウトドア体験を提供

垂井町出身で、子どもの頃はダンボールでつくった”武器”を手に野山を駆け回っていたという岩崎さん。
県外でアパレル会社に勤務しつつ、5年前からサバイバルゲームを楽しむようになり、実家の山を会場にしたところ大好評。アウトドア好きの仲間からのアドバイスを受け、キャンプ場を開設することに。家族や友人の支援のもと、ほぼ手づくりでつくり上げ、2022年冬より本格的な運営に乗り出した。

「どこにでもある山」を、
工夫次第で「魅力溢れる場」に

田舎の山って「価値がない」と思われがちですよね。どこに行っても同じに見えるし、なんでもないように見えてしまう。でも、実家の山をサバゲー会場としてSNSで紹介したら、県外からもたくさん遊びに来てくれて、誰もが「いいところだね」って言ってくれる。もしかしたら、自分たちの「何をやるか」「どう伝えるか」という工夫次第で、この場所に価値を与えられるんじゃないかと思ったんです

コロナ禍もあって、世の中は空前のアウトドアブーム。仲間の勧めもあり、キャンプ場として造成することに決めた。ただし業者に依頼せず、家族や友人の支援を得ながらの完全手づくり。知り合いのアーティストに看板を描いてもらったり、近所の子どもたちと一緒に棚を作ったり、中でも建設業を営む父親の協力は大きかったという。

父に教えてもらって重機を動かしたり、山道を整備したり。さすがだなと思いましたね。知り合いから土を分けてもらうなど、改めて父の人脈の広さを知り、「この町で働く先輩」として尊敬し、心強く思っています”

2022年冬に完成したキャンプ場は、約三千平方メートルの広大な敷地に異なるコンセプトのサイトが3つ入る。直接道路に面し、車数台が駐められるサイトは砂利を敷いて初心者向けに、山道を上ったサイトは木々の間から山を見渡せ、”森”を満喫できる。そして、一番奥のサイトは空が広く開放感があり、アスレチックやイベントにも最適。いずれも1日1組限定というプライベート感が魅力だ。

SNSやWebサイトで申し込みを受け付けたところ、いろんな地域からきていただけるようになりました。焚き火やバーベキューはもちろん、絵を描いたり、楽器を弾いたり、皆さん本当に自由に楽しまれていますよ。キャンプ場といっても、楽しみ方はいろいろ。どんな人が来るか、どう利用するか、それで場の魅力が高まってくるように思います。

出会いによる化学変化で、楽しみ方も自由自在

そして、岩崎さんの事業を加速させたのが、2022年9月より参加した『垂井町創業支援アカデミー』での出会いだ。事業計画や資金調達などのセミナーで知識を得るだけでなく、垂井町で起業した人たちと知り合い、お互いのイベントに参加したり、一緒に勉強会に参加したり、交流の中でさまざまな可能性を見出していった。

垂井はほどよいサイズの町で、なんとなくみんなが顔見知り。でも、東西南北で祭りや文化が違うためか、一緒に何かをするまでには至らなかったんです。そこにアカデミーが、起業という目標で連携するきっかけをくれた。もともとあった助け合える関係を”掘り起こした”というところでしょうか

その相乗効果の一つの例が、垂井フォレストフィールドを会場として、子どもが自由に遊ぶ「プレーパーク」の開催だ。地元で保育士として働く友人を中心に、学童サービスを手掛ける「HARU kids club」のスタッフなど、アカデミーを通じて知り合ったメンバーも参画。「季節ごとの遊び方を楽しもう!」をコンセプトに、2023年は春・夏・秋と開催し、多くの親子連れで賑わった。

秋の回では、マウンテンバイクのコースをつくってレースを開催しました。大いに盛り上がりましたよ。ほかにも木のアスレチックやブランコも用意して、カレーが食べられる「こども食堂」も開きました。でも、あえて”もてなす”つもりはなくて、子どもは山にさえいれば、自分でどんどん面白いことを見つけて楽しむ、いわば遊びの天才なんですよね。そんな彼らを見習って、私ももっと自由に発想し、みんなが遊びをデザインできる場にしていきたいと思っています

岩崎さんのそうした柔軟なスタンスは、人との関わり方にも現れている。アカデミーだけでなく、垂井町の内外のさまざまな人とつながり、続々と”楽しいこと”を生み出している。たとえば、2023年8月に開催されたレゲエの音楽イベントは、岩崎さんが参加したイベントで知り合いに主催者を紹介され、その場で垂井での開催が決定したという。

野外フェスをやりたいと思われていたようで、ひょんなことから開催が決まりました。当日は、DJブースに加えてジャークチキンなどの出店もあり、テントを張って宿泊する人もいて、ゆるい感じで楽しんでましたね。若い人から40〜50代まで、地元だけでなく県外からの参加もありました。

自然の中で、子どもたちの「生きる力」を育む場に

キャンプ場開設から1年、順調にサイトが埋まり、イベント会場としても認知されるようになってきた。2年目は、さらにサイトがしっかりと埋まるよう、プライベートキャンプ場としての認知を広げていく。

常連さんも増えてきて「こうしたら?」というアイデアをたくさんいただくようになりました。それぞれお気に入りのサイトがあって、居心地良く”自分のサイト”に育てようとしてくださっているのを感じます。私としてもシンプルな良さをしっかりと残しつつ、少しずつよりよい施設にしていきたいと思っています。

そして、中長期的なテーマとして、岩崎さんが力を入れていきたいと考えているのが、”子どもたちの遊び場・学びの場”として定期的に通えるスペースづくりだ。敷地内の小屋を改造して開放することを予定しており、そこを拠点として川遊びや虫取りに没頭するもよし、静かな環境で絵や音楽などに取り組むもよし。子どもたちが好きなものに思う存分取り組み、個性を伸ばす場所にしたいという。
そうした思いが芽生えたのは、岩崎さん自身にも子どもが生まれ、一日一日の成長ぶりに驚き、その時間を共有する大切さを実感したからだ。

1年間の育休で感じたのは、子どもの圧倒的な成長力と、それに大人が枠をはめる愚かさでした。それでも日常生活ではすぐに「ダメ」って言ってしまうけど、自然の中にいれば、大人もリラックスして見守ることができます。子どもは五感をフルに使ってのびのびと遊べるし、遊びを通じて成長できる。たとえば、先日の火起こしイベントでは、大人は早々に諦めたのに、子どもたちはみんな粘り強く取り組んで全員成功したんです。改めて子どもの集中力や好奇心に感動しました

そして、岩崎さん自身も山で遊んだことが、楽しい思い出とともに「生きる力」になっていることを確信しているという。「大人が楽しんでいれば、子どもにも伝わると思います」と岩崎さん。ここでの体験をより豊かなものにしてもらうために、楽しみながら岩崎さんの挑戦は続いていく。

ページトップへ