岐阜県垂井町 ONLINE COLLECTION
作る人のお話
垂井日之出印刷所
沢島 武徳さん

創業108年、改革し続ける印刷業。
戦国武将グッズで地元を盛り上げる

大正5年創業の垂井日之出印刷所では、ブームに先駆け2000年頃から「戦国武将グッズ」を開発。自社ビル内の専門店やECサイトでも販売し、全国にも展開。地元ゆかりの竹中半兵衛に加え、隣町関ケ原にちなんだ東軍・西軍の武将のグッズがずらりとそろい、遠方からも注文が来るという。若い社員の発案で始まった新事業が売上の10%を占めるまでに成長している。

社員の発案で生まれた
戦国武将グッズ

印刷工場を併設した事務所の一角、垂井日之出印刷所の戦国武将グッズ専門店」には「ひのでや」のノボリ旗がはためく。中には戦国武将の家紋やイメージをモチーフにした商品がずらりと展示されている。街の中心部からは距離があるものの、ネットの地図を頼りにグッズを買いに来る一般客もいるという。

2005年頃だったでしょうか、販促企画を担当していた若手社員が「戦国武将グッズを作りたい」と提案してきたんです。関ケ原の観光パンフレットのコンペのために「関ケ原歴史民俗資料館」に勉強に行き、そこで若い人の来館が増えてグッズが売れはじめていると聞いて、自分たちでも作ってみたいと思ったようです。正直、売れるかどうか疑問はありましたが、せっかくの社員のやる気を応援しようと試験的にはじめたのがきっかけでした

そんな沢島さんもまた、ネット受注ネットワークにいち早く挑戦するなど、急速に変化し続ける印刷業界にあって様々なチャレンジを重ねてきた。ネット受注は一時成果を上げたものの、世の中が追いついて価格競争となり、現在は積極的には受けていない。しかし、そうした試行錯誤や新しいチャレンジをすることで厳しい業界を生き抜いてきたという実感がある。

いろいろと挑戦しては上手くいったり失敗したり、「早すぎたな」と思う施策もありました。戦国武将グッズも、はじめから勝算があったわけではありません。実は最初に作ったのは「変わり兜(かぶと)」のクリアファイルで、2000年開催の「決戦関ケ原大垣博」で「葵 徳川三代」の大河ドラマ館で販売したのですが、マニアックすぎたのか、けっこう売れ残ってしまったんです。そこで「関ケ原歴史民俗資料館」で細々と販売してもらっていたら、2005年頃から急に売れるようになって。そのタイミングで社員の提案があり、2007年には「歴女」が流行語になるほどの戦国武将ブームとなっていて、気がついたら時流に乗っていたというわけです。

まず最初のヒット商品となったのが、武将の家紋や花押などをモチーフにした「金蒔絵シール」だった。その後は続々と商品のバリエーションが増え、販路についても中部・近畿地区の土産物屋を中心に、西は姫路から関東方面にも広がった。現在は専門の営業部門を置かずとも、各方面から問い合わせが来るまでになっている。

本業の傍ら、新たな販路を拓くため
ECに挑戦

現在は多種多様な戦国武将グッズを展開しており、デザインも自社のグラフィックデザイナーが手掛ける。基本的に印刷業が本業ということもあってプリントや刺繍の品質にはこだわりがあり、ほとんど手作業で行うため、美しいだけでなく1枚からでも対応できるのも強みと言えるだろう。

一定品質を保って商品化しようとすると、プリントする前の製品の仕入れや原価管理、在庫量の調整などが難しくなります。小さなロットでつくりながらも在庫切れにしないためにはどうするか、今も試行錯誤の連続です。さらにTシャツやキャップなどはどうしても原価が高くなるので、卸販売ではなかなか利益がとれない。そこで、半受注型にも対応できる直販モデルができないかと考え、自前でECサイトを立ち上げました。

ECサイトには新作がいち早く登場し、物によっては40武将ものバリエーションが用意されている。コロナ禍のもとでは、少しでも晴れやかな気持ちで過ごしたいという思いからか、武将モチーフをプリントした「戦国マスク」が人気を博した。現在の売れ筋は、織田信長や伊達政宗などの人気武将のTシャツやパーカー、キャップなどで、関ケ原のお土産にと石田三成グッズを求める人も多く、垂井ゆかりの竹中半兵衛グッズは若年層に人気があるという。

ECサイトなら、地域別や時期別などで売れ筋がわかるし、データを予測に活用することもできます。たとえば、全国的に人気の織田信長グッズは地元では意外と売れないんですよ。イベントなどに出店する際も、むやみに商品を作るのではなく、考えて用意するようになってきました。また、常にフレッシュな状態を保っておかないと、ECの売上は落ちてきてしまうので、定期的な新商品開発や情報発信などを心がけています。

武将グッズをきっかけに
垂井を知ってほしい

いわゆる戦国武将ブームといわれる時期は過ぎたものの、ドラマや漫画などで歴史に親しみ、歴史ファンを自認する人々はあらゆる年代に見受けられる。コロナが落ち着き、旅行者が増える中で、その土地の武将グッズをお土産に選ぶ人も増えると考えられる。

一時のブームは過ぎても、定番的に購入する層は常に一定いるので、手堅い事業として継続していきたいと考えています。ただ、安定的な事業では同業他社との競争にもなりうるので、その中でいかに優位性を発揮して、お客様に選んでいただけるかが重要になります。ECのデータ、イベントでのリアルな反応などをフィードバックしながら製品を開発し、事業として継続できるよう努力していきたいと考えています。

もともとは地元のガイドブックの製作も手掛け、約30年間、ボランティアガイドの教科書として使われてきた。他にも、垂井町史を手掛けた歴史学者の太田三郎氏の著書などの製作にも携わったことから、沢島さんをはじめ、社内には歴史好きが多い。そうした素地があったからこそ、戦国武将グッズの事業を応援しようという雰囲気を醸成できたと思われる。

伊達と上杉以外、当代のほとんどの武将が関ケ原に関わっていることで、私たちの商品化のヒントになりました。幅広く扱いながらもやっぱり、垂井ゆかりの竹中半兵衛を応援したかったり、関ケ原という決戦の地を見てほしいと思ったり、地元びいきはありますね。当社の戦国武将グッズをきっかけに垂井・大垣・関ケ原というエリアに興味を持ってもらえると嬉しく思います。

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