岐阜県垂井町 ONLINE COLLECTION
作る人のお話
株式会社レンジャー 代表取締役
太田 佳祐さん

垂井を元気にするのが仕事。
目指すは地域の課題解決レンジャー

垂井町で生まれ育ち、進学・就職で一度は町を出たものの30歳を目前に戻った太田さん。町議会議員として行政に携わりながら、様々な地域課題の解決に取り組んできた。2023年に株式会社レンジャーを設立し、「レンジャー=地域を歩き回る人」として垂井町を中心に暮らしや産業、子育てなど、様々な観点から地域課題を探索。解決に向けて行動している。

地域に必要だけど
『誰もやらないこと』にフォーカス

太田さんが垂井町にUターンしてきたのが29歳。11年間にわたる都会暮らしの後にしみじみ感じたのは、町の人の温かさだった。暮らし続けるうちに、豊かな自然や歴史などにも触れ、改めて郷土愛が増したという。

生まれ育ちも垂井で、十代の頃は外に出たくて仕方がありませんでした。でも、外に出て見えてきたのは故郷のいいところばかり。町に戻って地元を知るほど、その魅力を伝えたい、課題があれば解決したいと考えるようになりました。一方で『地方に元気がない』と言われる中で、『地元を元気にしたい』という一心で町議会議員になりました。そして、行政側ではなく一人の町民として地域のためにできることがないかと考え、株式会社レンジャーを立ち上げたんです。

そんな同社が現在取り組むテーマは、現在のところ大きく4つ。訪問介護の導入支援を中心とした「福祉事業」、地域の人々の困りごとを直接解決する「便利屋事業」。そして、自治体・地域企業向けの「コンサルティング事業」と、次世代の人材を育成する「教育・研修事業」だ。

まずは『できることから』と広報やデザインの仕事から始めたのですが、町を歩き回っていろんな人と触れ合ううちに、あれもこれもと増えていきました。特に『レンジャー事業』は何でも屋。草刈りや土木工事、空き家の片付けなど、何でもやります。もちろん何かに集中して専門的に取り組むというアプローチもありますが、まずは困っている人がいたら行動し、解決・改善する方法を考えようと。むしろ、地域のために『必要だけど誰もやらないこと』をやろうと思っています。

行政や大手企業の施策は、顕在化している課題の解決が基本であり、いわば多数派重視となることが多い。しかし、それだけでは事業や制度の狭間でどうしても取りこぼしが出てきてしまう。その取りこぼした課題にフォーカスすることで、よりよい地域づくりを目指したいという。

人が歴史を紡いできた
「この地域」のプロになる

そんな「地元を愛してやまない」太田さんの原点は、同様に地元を愛してきた両親やご先祖由来といえるだろう。父方は岐阜県関市で代々続く医師の家、母方は垂井町内で半世紀以上にわたり土木工事やインフラ保全を担ってきた。それぞれ全く異なる職種ながら、地域のために働き貢献してきたことに子どもながら誇りを感じていたという。

患者さんが来るかもしれない、とお正月にもお酒を飲まずにいたり、夜中に黙々と線路を修理して始発に間に合わせたり、そんな親や親族の背中を見ながら育ちました。世の中には、たとえ誰もその努力を知らなくても”やるべきこと”がある。それを実行している人のことを『かっこいいな』と憧れていました。とはいえ、自分が何に興味があり、何をしたいのかわからず、自分の道を決められなくて悶々としていた時期もありました。

そこで、大学では好きだった日本の文学や歴史を学ぼうと国文学を専攻。卒業後、仕事に就く際には、人々の人生の選択肢を広げる手伝いがしたいと考え、様々な人のキャリア支援を行なう会社に就職した。

様々なキャリアの方を担当しましたが、『人に歴史あり』とはよく言うもので、人の選択には必ず過去の経験が紐づいているんですよね。そして、町や地域にも同じことが言えると気づいたんです。長い時間をかけて先人が築いてきたものが、少しずつ更新されて今の町の姿がある。そうした目で故郷の町を見ると、歴史や文化が長きにわたって受け継がれてきた魅力的な場所であることに改めて感動しました。そこに関わりたいという思いが自然と湧いて、町のキャリアや成長に関わる”地域のプロ”になろうと思ったんです。

その思いが政治家をめざす原動力となり、会社設立にもつながっていった。多方面に関心を示すように見えながら、そのすべてが「この地域のため」に集約されているというわけだ。

小さな困りごとに一つ一つ真摯に対応することで、それがなぜ生じているのか、未来はどうなるのかと、問題の原因やメカニズムなどに思いを馳せることが増えました。現在ある課題を解決するだけでなく、10〜20年、そしてずっと先の未来を考え、仕組みや制度などを変えたり、新たにつくったりする必要があるのは明らかです。これからもライフワークとして個人・会社に関わらず、地域の未来を考えながら事業や政策提言を行なっていきたいと考えています。

地域の創業支援や
観光事業への展望も

そんな「地域のプロ」である太田さんの一週間は、まさに”変身”の連続だ。ある時は作業着を着て重機を乗りこなし、ある時はTシャツと短パンで子どもたちと触れ合い、またある時はキリッとした姿でIT講師を務める。その中でもユニークな取り組みの1つが、不破地域のオリジナルグッズの開発だ。

もともとは不破地域の歴史や文化を”今の形”に集約させたものを開発したいと考えたのがきっかけです。カトラリーに垂井町町花の椿と関ヶ原町町花の梅、関ヶ原合戦を表す刃、伊吹山や垂井の泉、南宮大社などを刻んで、『FUWAカトラリー』と名付けました。不破という地名は『決して破れない』という意味もあり、夢に溢れる結婚などの門出、勝負事などにも贈り物として選んでいただければと思います。

これまで不破が紡いできた歴史と自然と文化の象徴であるレリーフ模様は、太田さん自身の「この地域で生きていく」という思いともリンクしている。そして、町を元気にするためには、課題の解決だけでなく、不破・垂井の魅力を発信し、新しい風を取り入れていくことも重要と考えているという。

地域を元気にするには課題を解決するだけでなく、自分たちの魅力や強みを認識して、外に向けて積極的にアピールしていくことも重要と思っています。小さな課題と同様、小さな事業やモノ、サービスなどにフォーカスし、外に向けて訴求する支援も行なっていきたいですね。現在は、隣町である関ケ原町で民泊の運営をはじめとしたインバウンドに取り組もうと挑戦しています。テクノロジーの進化によって地方と海外がつながれるようになった今、戦国時代をはじめとする日本文化や歴史の発信やインバウンドなどにも可能性を感じています。

会社設立とともに、肩書として代表取締役に加えて「アカレンジャー」を名乗る太田さん。子どもの頃に憧れたヒーローのようになるべく、地域の課題解決のため、そしてその魅力を発信するために、八面六臂の活躍が続いていく。

ページトップへ